シフト作成をシステム化すると何が変わりますか? 小売のレジシフト開発の中身
作成にかかる時間が短くなる想定に加え、判断基準がルールとして残るためシフト作成の属人化も解けます。
- 時間を食っている正体は入力の手間ではなく、条件どうしがぶつかったときの調整の連鎖。
- 既製のシフト管理SaaSで済まなかったのは、レジ番号ごとの配置など現場固有の制約を扱いきれないため。
- 設計の中心は自動生成ではなく手動調整。不足はアラートで知らせ、最終判断は担当者が下す。
- 見込む効果は作成時間の短縮と引き継ぎのしやすさ。どれだけ縮むかは稼働後に現場で実測して確かめる。
目次
夕方の事務所で担当者がExcelのシフト表と向き合っています。埋めるべきマスの数は決まっていて、出勤できる人も分かっている。それでも3店舗分を組み終えるまでに毎日まとまった時間が消えていました。
OnFieldは年商300億円規模の小売企業向けに、レジシフトとローテーションの作成システムを開発しています。目標は作成時間を大きく縮めること。ただし機能の提案より先にやったのはその時間の中身の分解でした。
シフト作成をシステム化すると何が変わりますか?
変わるのは作成時間と、その仕事を誰ができるかの2点です。毎日の作成にかかる時間は短くなる想定です。判断基準がシステムのルールとして残るため、担当者が代わっても引き継げます。
短くなることばかりが語られがちですが、現場で大きいのは後者だと考えています。組める人が1人しかいなければ、その人は休めません。
なぜ表を埋めるだけの作業にこれほど時間がかかるのですか?
時間が溶けるのは条件どうしがぶつかったときの調整です。入力そのものは短時間で終わります。1か所を直すと別の場所へ矛盾が飛び、それをまた直す連鎖が起きます。
店舗ごとの人員、勤務時間、休憩の取り方、レジ番号ごとの配置、急な欠員。これらは独立していません。休憩を動かせばレジが空き、レジを埋めれば勤務時間が超過する。しかも休憩の長さは法律で決まっていて、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上が必要です(厚生労働省労働時間・休日)。制約の中から成り立つ組み合わせを探す仕事なので、マスの数からは所要時間が読めません。
表からは見えない事情もありました。「この時間帯はベテランを入れる」といった判断基準の多くが担当者の頭の中にしかない。だから他の人には代われない仕事になっていました。
既製のシフト管理SaaSでは済まなかったのですか?
済む会社のほうが多いはずです。既製品で足りるなら、そのほうが早く安く終わります。
この現場に手作業が残っていたのは、レジ番号ごとの配置、時間帯ごとの必要人数、店舗ごとに違う運用といった制約を既製品が扱いきれなかったからです。合わせにいくと、変えるのは現場のやり方のほうになる。その負担が導入の効果を上回ります。
分かれ目は制約の性質にあります。業務上どうしても必要な制約なら作る価値があり、昔からの慣習にすぎないなら業務のほうを見直すほうが早い。この見極めを飛ばして作ると、慣習をそのままシステムに固めてしまいます。
自動生成と手動調整、どちらを設計の中心に置きますか?
手動調整です。自動生成の結果はたたき台。最終判断は現場の担当者が下します。
システムの機能は次のとおりです。
- 月間シフト表のインポート
- レジローテーション表の自動生成
- レジ番号・時間帯ごとのグリッド表示
- 手動調整・不足アラート
- Excel / PDF出力
- 店舗・従業員・部門・ルール管理
主役に見えるのは自動生成でしょう。設計の中心に置いたのはその隣にある手動調整と不足アラートのほうでした。頭の中の判断基準を初日にすべてルール化するのは無理だと分かっていたからです。ルールにできたものはシステムが引き受け、まだ言葉になっていないものは人が画面の上で直す。この分担なら運用しながらルールを増やしていけます。
出力はExcelとPDFにしました。現場と本部がそのまま使える形です。覚えてもらう操作は少ないほど定着します。
Case年商300億円規模の小売企業向けシフト作成システムを開発店舗ごとの人員、勤務時間、休憩、レジ配置が互いに絡み合い、1か所を直すと別の場所に矛盾が出る。この調整の連鎖をシステム側へ移した開発事例です。効果はどこに出ると見ていますか?
見込んでいるのは作成時間の短縮と、シフトを組める人が増えることです。どちらも現時点では想定にとどまります。どれだけ縮むかは稼働後に現場で実測して確かめます。
金額の試算はまだ出していません。前提が動けば数字も崩れるからです。導入初期は自動生成の結果を人が直す量が多く、想定どおりに縮まない日も出るはずです。それでも見込みとしては十分だと考えています。削減分の大半が調整の連鎖という、毎日発生する作業から出ているからです。
時間より先に効果が見えるのは引き継ぎの場面かもしれません。ルールとして書き出された判断基準は担当者が代わっても残ります。
同じ設計は自社の業務にも当てはまりますか?
Excelと手作業で回っていて、条件どうしがぶつかる業務であれば当てはまります。配車、清掃の人員配置、面談の割り当て。成り立つ組み合わせを人が探している業務が候補です。
ただし、どの業務から手をつけるかの見立ては会社ごとに変わります。現場業務のどこからAI化するかの順番は別の記事にまとめました。
Column現場業務のAI化はどこから始めればよいですか? 業種別の最初の一手現場業務のAI化をどこから始めるべきかを解説。時間が溶けている場所の見分け方、小売・運送・介護・クリニック・バックオフィスの業種別の候補、最初の一つを選ぶ基準と進め方を実務目線で整理します。2026.08.03 AI活用 ServiceオーダーメイドSaaS事業御社のオペレーションに合わせた業務システムを月額でご提供する冒頭の担当者にとって変わるのは夕方の過ごし方です。見慣れた表形式も、いつもの調整の手順もそのまま。組み合わせの計算だけがシステムに移ります。運用を変えずに作業だけを減らせるかどうか。現場のシステム化が定着するかどうかはそこで分かれます。







